神の贈り物と呼ばれた実、色づくころ

八百屋さんの店先が、すっかりオレンジ色に染まってきました。柿です。
品種によって出回る時期は少しずつずれますが、これからが柿という果物のいちばんの本番。走りの品種から盛りの品種へ、バトンタッチが始まる頃合いなんです。今年は木によって生り方にばらつきがあったという声も聞かれますが、そんな年だからこそ、一個一個をじっくり選んで味わいたいですね。

ここだけの豆知識
渋みの正体は、タンニンが「溶けるか溶けないか」なんです
柿の渋みのもとはタンニンという成分なのですが、実は甘柿にも渋柿にも、どちらにもちゃんと入っているんです。違いは、そのタンニンが唾液に溶けるかどうか。渋柿が渋いのは果肉のタンニン細胞の内容物が水に溶けやすいためで、噛まれたりすると内容物が流れ出し、唾液と混じって渋さを感じるのだそうです。
熟していく過程や、渋抜きの処理の中で水溶性のタンニンが連結して大きな分子になり、不溶化することで、だ液にタンニンが溶け出さなくなり、渋味も消える仕組みなのだとか。甘いか渋いかは、タンニンの量ではなく「溶けるかどうか」で決まる。なんだか化学の授業みたいで、面白いと思いませんか。

学名は「神の食べ物」という意味なんです
柿の学名は Diospyros kaki。ギリシャ語で「Dios(神)」と「Pyros(食物)」を組み合わせたもので、「神様の食べ物」という意味を持つのだそうです。
学名の由来には、18世紀にオランダ商人とともに来日したスウェーデン人の植物学者・ツンベルクが、箱根で柿を見出したという逸話が伝わっています。寺社の境内に実っていたことから、神への捧げ物のように映ったのかもしれませんね。日本語の「カキ」がそのまま世界共通の学名になっているのも、なんだか誇らしい話です。
賢い選び方
目安として見るところは3つです。
ヘタ
ヘタが果肉に隙間なくぴったりと張り付いているものが美味しいといわれ、ヘタは4枚に分かれますが、先端まで緑色でハリがあり、きれいに残っているものを選ぶとよいとされています。隙間があるものは、虫食いの可能性もあるのだそうです。

色づき
柿色といわれるオレンジ色が濃く、ヘタの下までオレンジ色をしているものは、太陽によく当たって熟している目安とされています。ただし太秋や西条のように熟しても色が薄めの品種もあるので、品種ごとの個性も頭に入れておきたいところです。
重みと張り
皮にハリがあり、ずっしりと重い感じがするもの、形がいびつではなくきれいなものが良品の目安といわれています。あくまで目安なので、心配なときはパックの消費期限や保存状態もあわせて確認すると安心です。
おいしく食べるために
柿は、冷やさずに常温でいただくのがおすすめです。理由があります。
柿に多く含まれるショ糖は温度で甘さが変わりにくく、冷やさなくても十分に甘さを感じられるのだそうです。きんきんに冷やしてしまうと、むしろ香りや食感の繊細さが分かりにくくなることも。白和えにするときも、柿を切ってすぐ和えるより、角が少し空気に触れてから和えた方が、りんごのような瑞々しい香りが立ちやすい気がします。

渋みの仕組みも、学名の由来も、知れば知るほど柿という果物の奥行きが見えてきます。店先のオレンジ色を見かけたら、ぜひヘタの緑と重みを確かめてから、一個手に取ってみてください。