その小さな一尾、実は「代役」かもしれません

居酒屋さんの焼き台から、香ばしいにおいが漂ってくる季節になりました。ししゃもです。
今月、北海道のむかわ町から嬉しいニュースが届きました。資源の減少で3年続けて休んでいた本ししゃも漁が、今秋ようやく試験的に動き出したのです。10日に行われた調査では、4年ぶりに網にその姿が戻り、30匹ほどが水揚げされたのだそうです。普段わたしたちが目にするししゃもの多くは、実はこの本ししゃもとは違う魚。今はその「本物」が、少しずつ川を遡りはじめる、まさにここからという時期なんです。

ここだけの豆知識
スーパーの「ししゃも」、実は本物でないことが多いんです
知っていましたか。スーパーや居酒屋でよく見かける子持ちの一尾は、ほとんどの場合「カラフトシシャモ」という別の魚なんです。本物のシシャモは北海道の太平洋沿岸でしか獲れない生息域の狭い魚で、水揚げ量も少なく高級魚として扱われています。一方でよく見るカラフトシシャモは英名カペリンといい、昔ながらのししゃもの代わりとして海外から運ばれてくる、姿形のよく似た仲間の魚なんです。どちらも同じキュウリウオ科の魚なので、偽物というより「親戚」のような存在と思うとしっくりきますね。

名前の由来は、アイヌの伝説にあるそうです
「柳葉魚」と書いて「ししゃも」と読むのも、もとはアイヌ語なんです。語源はアイヌ語で、ススは柳、ハムは葉を意味し、合わせて「柳の葉」を表す言葉だとされています。飢えに苦しむ人々を哀れんだ神様が、柳の葉を魚に変えて与えたという伝説が各地に伝わっているのだそうです。漢字の当て字ではなく、物語がそのまま名前になった魚だと思うと、焼き台の上の一尾も少し違って見えてきませんか。
賢い選び方
見るところは3つです。
パッケージの表示
名称や原産国の欄をのぞいてみてください。「カラフトシシャモ」や海外の産地名が書かれていれば代用魚、国産で地名が入っていれば本ししゃもの可能性が高くなります。どちらもそれぞれのおいしさがあるので、知って選ぶだけで楽しみ方が広がります。

体の色合い
本ししゃもは赤みがかった色合いが特徴とされ、お腹にはふっくらと卵が詰まっています。色味や卵の入り方は、見分けのひとつの目安として覚えておくとよさそうです。
身の張りと表面のツヤ
これは魚全般に言えることですが、身がだらんとせず張りがあり、表面につやのあるものを選びたいところです。あわせてパッケージの消費期限や保存状態も確認しておくと安心です。
おすすめの食べ方
やっぱり素焼きが一番です。コツはひとつだけ。強火で一気にではなく、弱めの火でじっくり焼くこと。
小さな魚だからとつい強火にしたくなりますが、それだと表面だけ焦げて中まで火が通りにくくなってしまいます。弱めの火でじっくり焼くことで、卵の部分までしっかり火が通り、身もふっくら仕上がります。ししゃもは生で食べる魚ではないので、中心まできちんと焼けているか確かめてから召し上がってくださいね。両面をこんがり焼いたら、大根おろしを添えるだけで十分。皮の香ばしさと、卵のほろっとした食感が引き立ちます。

本物と代役、ふたつの魚が同じ名前で呼ばれているなんて、ちょっと不思議な話だと思いませんか。むかわの海でまた川を遡る姿が見られるようになったのも、今年ならではの嬉しい知らせです。焼き台の煙の向こうに、そんな物語を思い浮かべながら、今夜の一尾をどうぞ。