外から見えない花を、まるごと味わう

店先のいちじくが、少しずつ小ぶりになってきたと感じませんか。
いちじくは8月の「走り」から9月にかけてが中心で、産地では夏果(なつか)と秋果(あきか)という2回の収穫時期を持っています。国産の果物別産地ランキングでは和歌山、愛知、大阪が上位で、愛知県のイチジクはハウス栽培と露地栽培によって4月から11月頃まで流通しているのだそうです。とはいえ露地物の盛りはやはり9月。10月も半ばを過ぎた今は、秋果もそろそろ名残の時期に入ってきました。
味がのった今のうちに、いちじくの話をしたいと思います。

ここだけの豆知識
いちじくの花は、実の中に隠れています
漢字で「無花果」と書くのに、これは誤解を招く名前なんです。イチジクは漢字で「無花果」と書くけれど、これは「花が無い果物」っていう意味なのですが、実際には花はあって、花が実の中に隠れて咲くという変わった仕組みになっているんですよ。切ったときに見える赤いつぶつぶ、あれがぜんぶ花の跡なんです。
本来は小さな蜂が受粉を助ける仕組みなのですが、日本で栽培されているいちじくは「単為結果性」の品種、すなわち受粉なしで実をつけるのだそうです。だから安心して皮ごとでも食べられるんですね。

名前の由来は「一熟」
もうひとつ、名前そのものにまつわる話です。いちじくという名前は「一熟」がなまって無花果(いちじく)になったそうです。これは一本の木にいちじくが毎日一個しかならないという説といちじくの実がひと月経って熟すことから一熟となったという説など、諸説あります。
毎日少しずつ熟していく果実だからこその名前。気の長い話ですけれど、なんだか風情があると思いませんか。
賢い選び方
見るところは3つです。
おしりの割れ方
いちじくは底(花がついていた部分)がわずかに裂けて蜜がにじんでいるものほど完熟です。割れすぎて汁が垂れているものは熟しすぎなので避けてください。

皮の色とハリ
全体が均一に濃い色で、ふっくらとハリのあるもの。部分的に色が薄かったり、しわが寄っているものは鮮度が落ちています。
持ったときの重み
見た目のわりにずっしり重いものは果汁をたっぷり含んでいる証拠です。
おいしく食べるために
そのまま食べるなら、冷やしすぎないことがコツです。
いちじくに限らず、果物の甘みは冷やしすぎると感じにくくなります。冷蔵庫から出してすぐではなく、食べる30分ほど前に室温に戻しておくと、本来の甘みがぐっと感じやすくなります。
生ハムと合わせるときも同じで、少し常温に近いほうが、果肉のとろりとした食感と塩気のバランスがよく出ます。冷たいまま食卓に出してしまうと、せっかくの香りまで閉じ込めてしまうので、もったいないんです。

名残の時期のいちじくは、見た目こそ小ぶりになりますが、味の濃さでは負けていません。今週あたり店先で見かけたら、ぜひ一度、常温に戻してから味わってみてください。