焦らず待った先に見える、あの蜜のこと

お店の棚に、早生のつがるやシナノスイートが並ぶ季節になりました。
でも、りんごの代表選手である「ふじ」は、まだこれから。収穫の最盛期は11月上旬と言われていて、今店頭にあるものは言ってみれば前座なんです。りんごの主役が登場するのは、もう少し先ということですね。
ちなみに2025年産りんごの収穫量は57万7,400t、出荷量は52万9,700tで、前年産に比べそれぞれ3万1,800t(5%)、2万5,200t(5%)減少しました。去年は少し不作気味だったようです。今年の数字はまだわかりませんが、品薄傾向が続いているなら、これからの時期は少し意識して選びたいところ。今週はりんごのお話です。

ここだけの豆知識
蜜は、注射で入れているわけではありません
よく聞かれるんですけど、違うんですよ。あの透き通った蜜の正体は「ソルビトール」という糖質アルコールの1種で、ソルビトールとは、りんごの成長過程で葉の光合成によって作られ果実内に運ばれるものなんです。
完熟期になると、すでに細胞内が糖でいっぱいになっているため、ソルビトールたちは細胞の中に入れず、細胞と細胞のすきまにたまるようになり、水分を引き寄せます。これが蜜になる、というわけです。
意外なことに、蜜入りのりんごの方が「甘い」と言われ人気ですが、蜜無しりんごと比べても、実は糖の量や甘味の強さに差がないケースが多いのだそうです。蜜そのものを味見しても、特に甘くは感じません。つまり蜜は、味の決め手というより「ちゃんと完熟しましたよ」というサインなんですね。

「ふじ」という名前、実は地名からきています
日本でいちばん作られている品種「ふじ」。この名前、青森県藤崎町という土地にちなんでいるんです。1958年(昭和33年)「東北7号」として選抜され、1962年(昭和37年)3月、全国りんご協議会名称選考会にて正式に命名されました。
「ふじ」の名前は、生まれ故郷の「藤崎町」と日本一の山「富士山」、ミス日本で女優の「山本富士子」にちなんでいるという逸話があります。一つの名前に、土地への愛着と日本一への願いが重なっている。素敵な由来だと思いませんか。
賢い選び方
見るところは3つです。
お尻の色
りんごのお尻のほうが少し透き通ったような黄色みをおびているりんごは、完熟した印。蜜が入っている可能性も高くなります。

ツルの太さ
ツルが太くてしっかりしているりんごを選んでください。細く頼りないものより、しっかり養分を送ってきた証です。
持ったときの重さ
同じ大きさのものでも重い方のりんごを。果汁がたっぷり詰まっている分、見た目以上にずっしり感じます。
上手な保存の仕方
コツはひとつだけ。1個ずつ袋に包んで、冷蔵庫の野菜室へ。
りんごは追熟を進めるガスを自分で出し続ける果物です。他の野菜や果物と一緒に裸のまま置いておくと、まわりまで早く熟させてしまうことがあります。袋に包んでおけば、そのガスが閉じ込められて周囲への影響をおさえられますし、乾燥も防げるので、シャキッとした食感が長持ちします。
常温に置きっぱなしにすると、思った以上に早く味が変わってしまうもの。ひと手間かけるだけで、週末までおいしさを保てますよ。

早生種はいまが出番、主役のふじはこれから。どちらも楽しみながら、11月の本番を待つのもいいものです。蜜を見つけたときは、甘さの印ではなく「よく頑張って熟したね」のサインとして、味わってみてください。