海に浮かぶ銀色の刀、北へ広がる旬

鮮魚コーナーで、銀色に光る刀のような魚を見かける季節になりました。たちうおです。
多くの魚が「獲れなくなった」と言われる中で、たちうおは少しちがう道をたどっている魚なんです。古くは西日本に多い魚でしたが、近年は東京湾でも大量にとれるようになり、宮城県でも水揚げが増えているのだそうです。10年ほど前は県内で約1トンだった水揚げ量が、2018年には100トンを超え、2021年には506トンと、10年ほどで約500倍にもなりました。漁場が北へ広がっている影響と言われていて、海があたたかくなっている影響だと考えると複雑な気持ちにもなりますけれど、身近な場所で出会える魚になってきたのは、うれしい変化とも言えそうです。

ここだけの豆知識
たちうおが「立って」泳ぐのは、影を消すため
名前のとおり、たちうおは体を垂直にして泳ぐことがある魚です。なぜそんな体勢をとるのか、不思議に思いませんか。光が少ない深海では、周りを見回してもなかなか獲物を見つけられません。そこで捕食者たちは上を見上げます。だから上を向いて立てば、自分も獲物のシルエットを見つけやすくなるんです。さらに体を直立させていれば影は点のように小さくなって、見つかる可能性を減らせます。獲物を狙いながら、自分の身も守っている。理にかなった泳ぎ方なんですよ。

あの銀色は、うろこではなく「グアニン」という膜
たちうおの体はうろこを持たず、「グアニン」という成分の層で覆われています。この銀色の膜が、体を守る役目を果たしているんです。ちなみにこのグアニンという物質は、模造真珠やマニキュア、アイシャドウのラメなどの銀粉の原料にもなっていたそうです。魚の体を守るための膜が、人の身だしなみにまで使われていた。なんだかおもしろい話でしょう。
賢い選び方
見るところは3つです。
体表の光沢
表面の銀色(グアニン)に光沢があって、身を押さえて硬いものは鮮度がよい証拠です。網でこすれてグアニンが剥がれているものは、身にもストレスがかかっているしるしなので避けましょう。

目の澄み具合
新鮮なたちうおの目は透明感があります。目が白濁していたり、くぼんでいたりする場合は、鮮度が落ちているサインです。
太さ
長さがあっても細身のものは身が薄いだけ。1メートル前後の大きさで、ずんぐりとした一尾を選んでみてください。
おすすめの食べ方
ムニエルも塩焼きも、どちらもおいしいたちうおですが、コツはひとつだけ。切り身にした後、塩をふって1時間ほど置くこと。
切り身に振り塩をして1時間ほど置いてから、じっくりと焼き上げる。これだけで、皮目から脂がにじみ出て、揚げたように香ばしく仕上がります。たちうおはうろこがなく皮が薄いぶん水分が多いので、時間を置いて余分な水気を抜いてあげることで、身がしっかり締まって旨みが濃くなるんです。焦らず、置く時間をつくってあげてください。

北上しながら、少しずつ身近な魚になってきたたちうお。銀色の輝きを目印に、今の時季の一尾を選んでみてください。塩をふって少し待つ、そのひと手間が、いつもの一皿を変えてくれると思いますよ。