買ってすぐ焼かない、という選択

さつまいもの収穫が始まりましたね。お店に「新芋」の文字が並ぶ季節です。
ただ、さつまいもはお値段の高い状態が続いています。2018年に国内ではじめて見つかった「基腐(もとぐされ)病」という病気が全国の産地に広がってしまって、収穫量が落ち込んだままなんです。総務省の調べでは、今年7月の全国平均は1キロあたり711円でした。
高いお買い物だからこそ、いちばんおいしいときに食べたい。それがいつなのかというと、実は「買ってすぐ」ではないんです。

ここだけの豆知識
掘りたてより、寝かせたほうが甘い
さつまいもは、収穫した直後がピークではない、めずらしい野菜です。風通しのよい場所で数週間寝かせると、余分な水分が抜けて、でんぷんが糖に変わって甘みが増していきます。
9月に出回るのは、まさに掘りたての「走り」。量が増えて味も乗ってくるのは10月から11月ごろです。ですから今買ったものは、すぐ食べずに新聞紙に包んで室温に置いておくと、化けますよ。
ただし冷蔵庫はいけません。低温に弱いので、傷んでしまいます。

甘さは「焼き方」で決まります
さつまいもの甘さのもとは、加熱によって生まれる麦芽糖(マルトース)です。生の状態にはほとんど入っていません。
鍵になるのが、さつまいも自身が持っているβ-アミラーゼという酵素。加熱でやわらかくなったでんぷんを、この酵素が麦芽糖に分解してくれます。ただ、この酵素には弱点があって、70〜80℃あたりで働かなくなってしまうんです。
つまり、ゆっくり温度を上げるほど酵素が長く働いて、甘くなるということ。電子レンジで加熱したさつまいもが今ひとつ甘くないのは、一気に温度が上がって、酵素が仕事をする前に止まってしまうからなんですね。
同じお芋でも、焼き方でまるで別物になる。おもしろいでしょう。
賢い選び方
見るところは3つです。
太さ
細長いものより、ずんぐり太いもの。でんぷんをしっかり蓄えています。

皮のツヤと色
色が均一で、ツヤのあるもの。黒い斑点やへこみがあるものは避けてください。
切り口のまわり
黒っぽい蜜が固まっているものは、糖度が高いしるしです。見た目はよくありませんけれど、当たりですよ。
おすすめの食べ方
オーブンで焼き芋にするのが一番です。コツはひとつだけ。低温で、じっくり。
160℃くらいのオーブンで60分から90分。時間はかかりますが、これが酵素を長く働かせる、いちばん簡単な方法です。豆知識でお話ししたとおり、ゆっくり温度を上げるほど麦芽糖が増えていきます。
急ぐなら電子レンジ、と思いたくなりますよね。でもそこを我慢するだけで、甘さがまるで変わります。焼いているあいだは放っておけばいいので、手間そのものは大したことがありません。
洗ってアルミホイルに包んで、天板にのせて入れるだけ。竹串がすっと通れば完成です。

高い野菜になってしまいましたけれど、扱い方を知っていれば、その一本から引き出せる甘さは変わります。
買ったら、少し待つ。焼くときは、ゆっくり。