高くなった秋に、一尾をおいしく

秋の魚といえば、やっぱりさんまですね。
でも、ここ数年で「気軽に買える魚」ではなくなってしまいました。今年はとくに厳しい年になりそうです。水産研究・教育機構の事前調査によると、今シーズン日本の近海にやってくる量は去年の4割ほど。調査を始めてから、いちばん少ない見込みなのだそうです。
海の水温が上がって、さんまの好むプランクトンが減ってしまった。それで近くまで来てくれなくなったのだと言われています。
だからこそ、買った一尾を大事に食べたい。今週はさんまのお話です。

ここだけの豆知識
さんまには、胃がありません
知っていましたか。さんまは「無胃魚(むいぎょ)」といって、胃を持たない魚なんです。食べたものは食道から直接腸へ送られて、消化から排泄まで30分ほどで終わってしまいます。
だからお腹の中に食べかすが溜まりません。腐って臭くなることもない。さんまのワタがほろ苦いだけで嫌な匂いがしないのは、そういう体のつくりだからなんです。「内臓が一番おいしい」と言われるのも納得でしょう。
ちなみに、いわしもとびうおもコイも、おなじ仲間なんですよ。

「秋刀魚」と書くようになったのは、意外と最近
江戸から明治のころは、書く人によってバラバラでした。「青串魚」や「秋光魚」など、音や見た目から好きに字を当てていたそうです。
それが「秋刀魚」に定まったきっかけは、大正10年(1921年)に佐藤春夫が発表した『秋刀魚の歌』という詩。この詩が広く親しまれるうちに、秋に獲れる刀のような形の魚、という書き方が世間に浸透していきました。
詩ひとつで漢字が決まってしまう。なんだかすてきだと思いませんか。
賢い選び方
見るところは3つだけ。覚えておくと、お店で迷いません。
口先
黄色く色づいているのが新鮮なしるしです。時間が経つと茶色っぽくなってしまいます。これが一番わかりやすい目印。

背中
頭のうしろから背にかけて、ぷっくり盛り上がっているもの。脂がのっている証拠です。平べったいものは細身ですね。
目
澄んでいて濁っていないもの。赤く充血しているものは避けてください。
数が少ない年は小ぶりなものが並びがちですけれど、小さくても背が張っていれば脂はちゃんとのっています。だいじょうぶ。
おすすめの食べ方
やっぱり塩焼きが一番です。コツはひとつだけ。塩は2回に分けてふること。
まず全体に塩をふって、10分ほど置いてみてください。表面に水分が浮いてきます。それをキッチンペーパーで拭き取る。この水分に臭みが入っているので、拭くだけで焼き上がりの香りが変わりますよ。
そして焼く直前に、もう一度うっすら塩。こちらが味付けです。
最初にまとめてふってしまうと、臭みは抜けないし塩辛くなるし、いいことがありません。同じ量なのに、分けるだけで別物になる。ふしぎでしょう。

高くなってしまいましたけれど、焼きたてに大根おろしとすだちを合わせた瞬間は、やっぱり他の魚ではかないません。
今年は一尾ずつ、ていねいに。