春とは別の魚みたいな、秋のかつお

かつおというと、春のイメージがありませんか。「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」なんて言いますものね。
でも、秋のかつおもすばらしいんです。「戻りがつお」と呼ばれていて、9月から10月ごろがいちばん脂ののる時期。春のさっぱりしたかつおとは、まるで別の魚のような味わいです。
ただ、かつおの漁獲は近ごろ振るいません。昨年は1月から5月の全国の漁獲量が前年の半分ほどまで落ち込んで、初がつおも不漁でした。今年もお店で見かけたら、逃さず手に取ってみてください。

ここだけの豆知識
初がつおと戻りがつおは、同じ魚です
別の種類だと思っていた方はいませんか。実はまったく同じ、一匹のかつおの「行き」と「帰り」なんです。
かつおは春から夏にかけて日本の近海を北へのぼり、秋になると南へ戻っていきます。北の海でたっぷり餌を食べて、脂を蓄えてから帰ってくる。だから「戻り」がつお。
その差がどのくらいかというと、脂質の量でおよそ12倍。同じ魚とは思えない違いでしょう。戻りがつおが「トロがつお」と呼ばれるのも、うなずけます。

かつおは、止まると息ができません
多くの魚はえらを開いたり閉じたりして水を取り込みますが、かつおやまぐろのような回遊魚は、それができないんです。えらを自分で動かす力が退化してしまっているので、口を半開きにして泳ぎながら、水をえらへ流し込んで呼吸しています。
「ラム換水」と呼ばれる仕組みです。泳ぐことと息をすることが、切り離せない。だから一生泳ぎ続けなければならないんですね。
眠っているあいだも泳いでいるのだそうです。なんだか、たいへんな生き方だと思いませんか。
賢い選び方
お刺身やサクで買うことが多いと思うので、その見方を。
血合い
鮮やかな赤色をしているものが新鮮です。黒ずんでいるものは時間が経っています。

身の透明感
濁っていないもの。パックの底に赤い汁(ドリップ)が溜まっているものは、旨味と水分が抜けている可能性があるので避けてください。
サクの形
高さのあるものは背身で、かつおらしい味わい。平たいものは腹身で、脂ののりがよい傾向があります。お好みで選んでみてください。
おすすめの食べ方
たたきが一番です。コツはひとつ。厚めに切ること。
戻りがつおは脂がしっかりのっているので、薄く切ってしまうともったいないんです。1.5センチくらいの厚さで、ごろりと。噛んだときに脂の甘みが広がります。
それから、薬味はけちらないこと。にんにく、しょうが、みょうが、玉ねぎ、青ねぎ。濃厚な脂には、これくらい強い香りがちょうど釣り合います。ぽん酢をさっとかけて、薬味と一緒に。

春のかつおとは、まったく違う顔をしています。ぜひ、食べ比べてみてくださいね。