皮のすぐ下に、うまみが隠れている

八百屋さんの店先で、オレンジ色の束がぐっと目立つ季節になってきました。にんじんです。
一年じゅう並んでいる野菜なので、旬だと意識したことがない方も多いかもしれません。でも実は、これからが本番。西洋系と東洋系に大きく分けられ、日本には東洋系が江戸時代、西洋系が19世紀頃に伝わったのだそうです。今お店に並んでいるのは、ほとんどが西洋系の五寸にんじん。にんじんの色と甘さには、すべて仕組みがあり、β-カロテンの名はにんじん(carrot)から発見されたことに由来するのだそうです。今年は値段も平年並みで落ち着いていて、買い物しやすい頃合いですよ。これから12月にかけて、甘みがどんどん乗っていきます。

ここだけの豆知識
カロテンという名前、実はにんじんから生まれたんです
栄養の話でよく出てくる「β-カロテン」。この名前、どこから来たかご存じですか。にんじんの色はカロテノイドというグループの色素で、西洋種にはオレンジ色にカロテンが含まれています。にんじんは英語で「キャロット」、学名の「Daucus carota」の「carota」から、カロテンの語源とされています。つまり栄養素の名前のほうが、にんじんにちなんで付けられたということ。学名まで遡ると「赤くて温まるもの」という意味になるそうで、あのオレンジ色にぴったりな名前だと思いませんか。

寒くなると、甘くなる理由があります
にんじんは秋から冬にかけて味が変わっていく野菜です。旬のにんじんは寒さで凍るのを防ぐために、糖を蓄えるとされています。凍らないようにするための工夫が、そのまま私たちにとっての甘さになっている。植物の生きる知恵が、食卓にそのまま届いているみたいで、なんだか嬉しくなります。
賢い選び方
見るところは3つです。あくまで目安なので、気になるときは表示や保存状態も合わせて確かめてくださいね。
色とハリ
濃いオレンジ色で、表面にハリとツヤがあるものを選ぶとよいとされています。色が薄っぽく見えるものは、少し時間が経っている可能性があります。

ひげ根の跡
表面のひげ根の毛穴が浅くて少ないものがよいとされています。毛穴が深く目立つものは、土の中での育ち方に差があったのかもしれません。
切り口の太さ
葉が切り落としてあるにんじんは、断面を見て、葉が付いていた部分が細いもののほうが、葉に栄養分を取られていないとされています。切り口が大きく広がっているものより、きゅっと締まっているもののほうが身が詰まっている印象です。
おすすめの食べ方
代表的な食べ方といえば、やっぱりグラッセ。コツはひとつだけ。皮は厚くむかず、たわしで洗う程度にすること。
栄養分のほか、香りやうまみは皮に多く含まれているとされています。せっかくのうまみを皮と一緒に削ぎ落としてしまうのは、ちょっともったいない話。厚くむくよりも、表面の汚れを落とす程度にとどめておくほうが、グラッセにしたときの香りの立ち方が違ってきます。バターと少しの砂糖でつやを出すとき、にんじん自身の甘さがしっかり感じられるのは、皮のすぐ下にある力を活かせているからなんです。

名前の由来をたどると栄養素のほうがにんじんにちなんでいたり、寒さをしのぐ知恵がそのまま甘さになっていたり。知れば知るほど、オレンジ色の奥が深い野菜だと感じます。これから旬の盛りに向かう季節、ぜひ皮のすぐ下まで味わってみてくださいね。