記録的な不漁の秋に、一尾をたいせつに

北海道の海で、あきざけの水揚げが少しずつ始まっています。ただ、今年は「始まった」と手放しで喜べる状況ではないんです。
道立総合研究機構によると、2026年の秋サケの来遊は365万尾を予測しており、昨年予測も1,141万尾ながらも実測は686万尾(予測対比60%)であったことから、更に深刻な不漁が予想されます。去年の時点ですでに記録的だったのに、今年はそこからさらに半分近くまで落ち込む見込みなんですね。実際、初競りではブランド秋鮭「銀聖」が1キロあたり18万8888円という過去最高値を更新したとも報じられています。
旬の目安でいえば、あきざけは9月下旬からが本格的なスタートで、10月が盛り。ですから今はまだ「走り」の入り口です。これから量は増えていくはずですけれど、今年ばかりは値段も一緒に上がっていきそうな気配。だからこそ、出会えた一尾を大事に味わいたいと思うんです。

ここだけの豆知識
銀色に輝く個体ほど、価値が高いんです
あきざけは川に近づくにつれて、体に黒や黄色の模様(婚姻色)が出てきます。まだ海にいて、体が銀白色に輝いているうちに獲れたものは「銀毛(ぎんけ)」と呼ばれ、脂も身質も最高級とされているんですよ。さきほどお話しした「銀聖」も、この銀毛の中からさらに厳しい基準を通ったものだけが名乗れるブランドなんです。
同じ一尾でも、川に近いか遠いかでこんなに扱いが変わる。おもしろいと思いませんか。

あきざけには、捨てるところがありません
平安時代の記録にも残っているように、昔から鮭は「捨てるところがない」といわれています。身はもちろん、卵はイクラ、白子、皮、軟骨まで余すところなく食べられるのですが、なかでも意外なのが腎臓。中骨に沿ってついている赤黒い部分を塩漬けにしたものは「めふん」と呼ばれる塩辛で、名称の語源はアイヌ語の「腎臓」を意味する「メフル」から採られたとされています。
北海道では昔ながらの珍味として親しまれていて、お酒のお供にぴったりなんです。一尾からほんの少ししか取れない、貴重な部位なんですよ。
賢い選び方
見るところは3つです。
皮の色つや
銀色が強く、つやのあるもの。黒ずんだ模様がはっきり出ているものは、川に近づいて時間が経った個体で、身の質が落ちていることがあります。

切り身の断面
白い筋(脂肪)が細かく入っているものほど、脂がのっています。断面がぱさついて見えるものは避けたいところです。
エラの色
赤みが濃く鮮やかなもの。茶色っぽく変色しているものは鮮度が落ちているサインです。
おすすめの食べ方
あきざけといえば、ちゃんちゃん焼き。コツはひとつだけ。先に鮭だけ軽く焼き目をつけてから、野菜とみそだれをのせてふたをして蒸し焼きにすること。
産卵への準備にエネルギーが使われているため、あきざけは身の脂の乗りが少なくなっています。そのぶんパサつきやすいので、最初から野菜と一緒に炒め煮にしてしまうと、身が水っぽくなったり崩れたりしがちなんです。先に鮭の表面だけ焼き固めてうまみを閉じ込めてから、野菜の水分と蒸気でじっくり火を通してあげると、脂が少なくてもふっくら仕上がります。
みそだれの香ばしさとバターのコクが、あっさりした身によく合うのも、この時期ならではの楽しみですね。

不漁が続いて、簡単に手が届く魚ではなくなってきました。それでも、出会えた一尾には銀毛やめふんのような、知れば知るほど面白い物語が詰まっています。今のうちに、一尾を大事に味わってみてください。