恐竜の時代から変わらない、小さな実の話

いつのまにか、街のイチョウの木のまわりに、あの独特の匂いが漂い始める季節になりましたね。
でも、お店にぎんなんが並ぶのはこれからなんです。9月頃から採れ始め、11月半ば位までが収穫期になりますが、最も流通量が多いのは10月で、この頃がシーズンです。ということは、今の時期はまだ出始めの走り。本格的に楽しめるのはもう少し先なんですね。焦らず、これから深まっていく味を待ちたいと思います。

ここだけの豆知識
ぎんなんは、実は「メスの木」にしかなりません
イチョウは雌雄異株の植物で、雄花をつけるオスの木と雌花をつけるメスの木があり、メスの木にのみ銀杏がなるのです。だから街路樹を選ぶときには、あの匂いを避けたい場所ではオスの木が好まれることも多いのだそうです。
さらに面白いのが受精の仕組み。その起源が古いために受精形態がめずらしく、なんと花粉の中に精子を持っており、精子が泳いで受精し種子(銀杏)ができるのだそうなんです。地球上を恐竜が闊歩していた時代から、ほとんど姿を変えていない「生きた化石」と呼ばれているのも、なんだか納得できると思いませんか。

食べ過ぎると、体に毒になることがあります
ぎんなんには「メトキシピリドキシン」という成分が含まれていて、体内に入ると、身体は「ビタミンB6が体内に入ってきた」と勘違いしてしまい、その結果ビタミンB6が欠乏した状態になってしまいます。しかもこの有毒成分は熱に強く、煮る・焼くなどの加熱調理をしても消失しません。
とくに気をつけたいのが子どもです。報告されている中毒事例の70%以上が10歳未満のお子さんで、特に5歳未満のお子さんは少量でも中毒を起こす可能性が高いのだそう。大人でも、ひと晩でたくさん食べるのは控えて、少しずつ味わうくらいがちょうどいいと思います。
賢い選び方
見るところは3つです。
殻の色とツヤ
色が白いこと・表面につやがあることが良いものの目印です。時間が経つと黄ばんで、ツヤも失われていきます。

殻の乾き具合
殻の表面がよく乾いているものを選んでください。しっとり湿っているものは、傷みが進んでいることがあります。
振ったときの音
振ってもコロコロ音がしないことがポイント。音がするものは中の実が縮んで乾いてしまっている証拠なんです。
おすすめの食べ方
素揚げにするなら、コツはひとつだけ。殻に浅く切れ目を入れてから揚げること。
そのまま油に入れてしまうと、中の水分が加熱で急に膨張して、殻ごとパンッと弾けてしまうことがあります。あらかじめつなぎ目に浅くヒビを入れておけば、そこから蒸気が逃げてくれるので安全ですし、油の熱もむらなく伝わってくれるんです。
薄皮の下まできれいに火が通ると、翡翠のような緑色が透けて見えてきます。それが食べごろのサイン。塩をひとつまみふって、熱いうちに召し上がってください。もちもちとした食感は、揚げたてだからこそ味わえるものだと思います。

これから少しずつ出回り始めるぎんなん。茶碗蒸しの脇役としてはもちろん、素揚げでそのものの味を楽しむのも、この季節ならではの贅沢です。食べ過ぎにだけ気をつけて、秋の入り口をゆっくり味わってくださいね。